無題ドキュメント

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塵芥戦術
2001/06/24
 「私は元来きれい好きである」。などという表現には大抵含みがあるので注意を要する。
 まず、「元来」という副詞が付いている所から疑ってかかるべきであろう。誰の目にも明らかなきれい好きさんならば、わざわざ「元来」などと修飾する必要はなく、「オレ、キレイズキ」のように偽ネイティブ・アメリカン口調で言い切ってしまえば良いのである。
 つまり、「あなた方の目からはきれい好きには見えないかもしれないですけど、もともと私はきれい好きなんですよ。信じてくださいよ」という言い訳要素が混入していることが読みとれる。
 さらに、「きれい好き」という言葉自体にも問題がある。だいたい、人間はおろか、ほとんどの動物は生来きれい好きなのだ。ネコですら汚れた寝床には居着かない。人間ならば、例えば、二つの部屋のどちらかに住めと云われたとしよう。一つはあからさまに汚れた部屋である。もう一つは塵一つ落ちていないような清潔な部屋であったとして、汚れた方の部屋を選ぶ者などいるだろうか。
 路上で段ボールの家を住処とし、ゴミ箱を漁って糧とする者や、数年に渡って自室から出ることなく、風呂にも入らず、ひたすら美少女ゲームに興じ続ける者ですら、与えられるのならばきれいな環境を選ぶだろう。そのような人々が不潔な生活に甘んじているのは、ひとえに「清潔できれいな環境を作るのが面倒だ」からである。
 それゆえ、「私は元来きれい好きである」などという言葉には、何の意味もない。只の言い訳に過ぎないのである。
 であるから、知人宅に訪れた際、その乱雑極まりない部屋を目の当たりにして呆然としている貴方に、宿主がそのような言葉を吐きかけたならば、貴方の返答は一つしかない。「いいから黙って片づけろ」。
 さて、前置きが長くなったが、元来きれい好きの私は、現在自分の部屋のあまりの散らかりぶりに途方に暮れているところである。
 ざっと見回してみたところ、すでに部屋中の空間という空間に、様々なオブジェクトが無作為に配置されている。別の云い方をするなら、ありとあらゆるものがそこらに投げっぱなしであるということだ。移動するための足の踏み場の方がスペースとして小さい。いわゆる「逆飛び石」状態だ。
 一番目に付くのは、雑誌・文庫・漫画・書籍・辞書から周辺機器の取扱説明書に至るまでの、書物の数々だ。これらが一番始末に困る。本というのは「買うは易く、捨てるは難い」ものの代名詞ではなかろうか。日頃から倹約を美徳とし、「通帳は墓場まで持って行ったるぁー!」と豪語するほどの吝嗇家な私だが、書籍類にかけるお金は全く惜しんだことがない。毎月10種類以上に及ぶ雑誌を購入し、気に入った書籍の新刊ならば数千円の出費も厭わない。漫画本の大人買いについては以前も語ったとおり、1万円を超えてもどうということもない。
 こうして毎日の様に増え続ける書籍類だが、いざ捨てるとなるとこれが難しい。お気に入りの漫画や本なら何度でも読みたくなるし、雑誌についても同様だ。おかげで私の部屋には15年以上前から買い続けている雑誌が、当時の号から最新号に至るまで全て残っていたりする。整理されていないため、いざ読みたいときに目的の号を探すのに骨が折れるのが難点だが。
 その次に多いのが、CDやDVDの類だ。書籍類ほどかさばらないため、ひょっとしたら数量的にはこちらの方が多いかもしれない。
 その昔、虹村億泰の兄、京兆が、東方仗助に向かって「誰しもCDを聴き終わったら、次のCDを聴く前にケースにしまうものだ」というようなことを語っていたが、どうもその法則は私には当てはまらないらしい。というのも、私の部屋にはむき出しのCD・CD-R・DVDが山のように積まれている。正確には、CD・CD・CDケース・DVD・CD-R・CD・CD-Rケース・DVDケースなどというように、無作為な順序で積み上げられている。まさに、一つ積んでは父のため〜二つ積んでは母のため〜とでも云わんばかりだが、地獄の鬼ならぬ自分の不注意の所為で山を崩壊させてしまうこともしばしばだ。
 これのなにが困ると云って、目的のCDを探すのに、一枚あたり最大数時間を要してしまい、結局見つけられずに諦めてしまうことすら珍しくない、ということだ。目的のCDのケースは見つかったが、その中身は空であっただとか、CDだけ見つかってケースが見つからないため、CDキーを入力できずにインストールを諦めてしまうだとか、とにかく問題が多い。
 また、最近は雑誌の付録CD-ROMやハードウェアに付属するドライバのCD-ROMなど、プラスティックのケースが付いていないものが多く、これも始末に困る。こういったむき出しのCD-ROM類を整理するため、過去にいくつものCD-ROMファイルや収納ケースを購入したが、焼け石に水。ファイルやケースはあっという間に、増え続けるCD-ROM類によって満載されてしまう。雑誌に毎号付いてくるおまけCD-ROMを、後生大事に保管し続けているのが良くないのだとは分かってはいるのだが。
 ここまで書いたところで、自分の部屋が片づかないのは、この「捨てられない症候群」に原因があると確信するに至った次第である。よし、今日こそはがんばって全てを捨ててしまおう。雑誌もCDもなにもかも。そうすればきっと、明日の僕は生まれ変わった新しい僕。さあ、今すぐ片づけよう…あ、この雑誌はあの時の…捨てる前にもう一度だけ、もう一度読んだら捨てるからさぁ…
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